釣り場で喧嘩をする常連のヒットシーンからファイトまで

見えないが大小のベイトフィッシュがうようよ

釣り場には常連が必ずいる。大抵は年季の入ったおじさん〜じいさんだ。中には日課の散歩をするかのごとく毎日のように訪れ、竿を出している人もいる。

そんな中、釣りをするでもなくしょっちゅう同じ釣り場に顔を出し、常連のおじさん連中となにやら話し込む釣りをしない常連という人もいる。

僕がたまに行く小さな突堤でも、ほぼ毎日来ているであろう、じいさんたち数名の常連と、毎日のように来ているだろうけど釣りをしないじいさんが釣り場という空間を仲良く共有している姿を目にする。

人の釣りを眺めて何が楽しいのかわからないけど、時折常連の竿にかかった大物の取り込みを手伝ったり、釣らないまでも釣りの空気を楽しんでいるようにも感じられてそれはそれで微笑ましい光景だ。

ある日、その小さな突堤で3〜4人の釣る常連と1〜2人の釣らない常連が和気あいあいと釣りを楽しんでいた。

突堤先端の特等席を占領され、僕は少し離れた所で釣れそうにもない海にルアーを投げ込み、「やっぱ釣れねぇじいさんたちどかねえかな」とか考えていると不意に大きな声が聞こえた。大きな声というよりは喚き声のようなヒステリックな声だ。

喚き声の聞こえた方を見てみると、一人の釣らない常連が激昂しながら釣る常連の胸倉を釣り上げている。「おいおい、大丈夫か」と思いながら耳を澄ませていると、

「言って良いことと悪いことがあるだろうが!!!」と、釣らない常連が喚いている。何がきっかけかは分からないが、釣る常連が釣らない常連に向かって言ってはならない一言を発したのが原因のようだ。

激昂している常連はいかにも一癖ありそうな風体のじいさんで、体格も良い。胸倉を釣り上げながら激しく相手の事を罵っている。

うわ~怒ってんなあ。

一方、言ってはならない一言を発したと思われる常連のほうは、ヒョロっとしていて頭が薄くいかにも弱そうだ。胸倉を掴まれたまま相手の顔を見ずにうなだれている。

どうなんのコレ?

ちょっとワクワクしながら、退屈な釣り場に突如出現した熱い空間をチラチラ見る。

すぐそばにいる数名のじいさん達は撒き餌を投入したり、付け餌を替えたり無関係を装っている。

いや、止めようよ。さっきまで和気あいあいやってたっしょ。

しばらく地上で繰り広げられるファイトを観戦しながら、海中でのファイトを期待していたが魚は一向に僕の胸倉を掴みに来ない。

結局、あれだけ怒っていた体格の良いじいさんが引き際を探り始めているようで、釣り上げていた手を離し、さっきまでのファイトを無かったかのごとく、釣りの話をしだした。

いや、それ無理があるっしょ。

薄毛のじいさんはすでにテンションガタ落ちで相手の顔も見ずに相槌を繰り返すのみだ。

その場にいる全員がどことなくぎこちない。さっきまでの和気あいあいとした空間は簡単には戻らないようだ。

ここまでが一連のヒットシーンからファイトだ。釣りをしないのに釣り場に通うじいさんもたまには大物を釣り上げることがあるようである。